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リハビリ対象の方

(1)発声障害(音声障害;声の異常)

  • 声帯の器質的病変に基づく音声障害:急性声帯炎、声帯結節、声帯ポリープなどがあります。これらは声帯自体に炎症や腫瘤などができることで声のかすれが生じます。きっかけは風邪、仕事で長時間話すことが多い、スポーツ観戦で大声を出した、など明らかな場合とそうでない場合があります。
  • 声帯の運動障害に基づく音声障害:喉頭麻痺、披裂軟骨脱臼などがあります。これらは声帯自体に問題はありませんが、声帯を動かす神経の異常や外傷によって喉頭の形態に異常がみられ声のかすれが生じます。喉頭麻痺は神経疾患や甲状腺や胸部(肺や心臓など)の手術の後におこる場合があります。披裂軟骨脱臼は全身麻酔での気管挿管やスポーツ外傷などによっておこることが多いとされています。
  • 痙攣性発声障害:原因不明とされていますが、近年では喉頭のみにみられるジストニア(筋肉の緊張の異常により自分では制御できない運動が生じる)の一種であるとの見解が支持されています。サブタイプには内転型(患者さんの90%以上)、外転型(約1%)、混合型(約2%)があり、20歳~30歳代の若い女性に多いとされています。患者さんの大部分を占める内転型では、声がつまる、途切れる、ふるえるなどの症状がみられ、「いらっしゃいませ」や「ありがとうございます」など母音で始まる特定のことばが言いにくい場合があります。2018年10月より痙攣性発声障害に対するボツリヌストキシン局所注入療法が保険適応となりました。詳しくは当院受診時に医師にお尋ねください。
  • その他の音声障害:過緊張性発声障害、低緊張性発声障害、変声障害、心因性発声障害などがあります。これらは声帯自体や声帯を動かす神経に問題はありませんが、誤った発声法や声の使い過ぎなどにより声のかすれが生じます。心理的ストレスが原因で音声障害がみられる場合は、必要に応じて心療内科等へご紹介いたします。
  • 治療:声帯の器質的病変や運動障害に基づく音声障害では、医科的治療(投薬や手術)が優先されます。痙攣性発声障害ではボツリヌストキシン局所注入療法や手術が行われます。誤った発声法や声の使いすぎにより生じた音声障害に対しては、言語聴覚士による音声治療(声の衛生指導:発声に関する基礎的理解を促し、誤った発声方法や生活習慣を修正する、音声訓練:実際に発声しながら望ましい発声状態にする)を実施しています。音声訓練は週1回約40分です。自宅での自主練習に取り組むことができ、定期的に通院できる方が対象となります。

(2)構音障害(発音の異常)

  • 構音障害は、「カ」「サ」などの音が誤って産生される状態をいいます。構音障害には、口腔の形態や機能の異常(口唇口蓋裂、舌がん術後など)が原因で起こるもの、脳卒中やパーキンソン病などの変性疾患による神経筋の機能低下によるもの、また、原因が明らかではない、幼児期における発音の誤学習によるもの(例:カ行やサ行がタ行に、シがヒに近く聞こえるなど)があります。
  • 構音障害には、医学的治療が必要なものと構音訓練で改善するものがあります。こどもにみられる構音障害の多くは、構音訓練で正常な発音にすることができます。中には自然に治癒していくものもあり、症状に応じた対応が必要となります。

(3)吃音(流暢性の異常)

  • 幼児期~学童期:2歳から言葉が増えて2語文を話し出す頃、子供たちに音・音節や語のくり返しがみられるようになります。これは、通常しばらくすると消失しますが、一部の子供で音の引き伸ばし(例:「ぼーーうし」)やブロック、(例:「これ・・・ぼうし」)が加わり、時に身体的な緊張を伴うことがあります。こういった状態が半年以上続いた状態を吃音(進展・慢性化)と呼びます。
  • 学童期~成人の吃音:幼児期に始まった吃音の状態が良くなったり悪くなったりの波を繰り返しながらも症状が持続する状態です。音・音節のくり返し、音の引き伸ばし、ブロック(語の開始困難と語の分断)を主な言語症状とし、随伴症状と呼ばれる話す時の不自然な身体の動き(足を踏みならす、視線をそらす等)もみられることがあります。吃音への自覚と予期から、話す場面を避ける(回避)、別の言葉で言い換える(語の置きかえ)という反応を見せ、学校や職場での適応が困難になるなど2次的な障害が出てくることもあります。
  • 吃音のリハビリテーション:幼児期あるいは慢性化していない吃音(疑い)に対しては、話しやすい状況をつくること(環境調整)を行います。家庭や幼稚園の協力を得て、話し相手が、子供をせかさないでじっくりと話しを聴く姿勢をとること、自分の話すことが相手に伝わった喜びを感じられる環境づくりが求められます。学童期以降の吃音に対しては、学校や職場で合理的配慮が求められるよう、患者様自身が吃音を正しく理解し、受容するとともに、話す時のリズムを揃えていく方法(メトロノーム使用)や身体緊張を高めないで息を出す方法などをアドバイスすることもあります。現在は吃音を完全に治癒させる方法はありません。しかし、どのような状態であれば社会に適応し自分らしく生活できるのかを患者様一人一人と一緒に考え、具体策を提供する場となっています。

(4)成人の言語障害

  • 失語症:脳血管障害(脳卒中)や頭部外傷により、大脳優位半球(主に左半球)の言語中枢に損傷を受け、すでに獲得された言語の諸側面(聴く、話す、読む、書く)の能力が低下した状態です。
  • 治療・言語リハビリテーション:失語症の諸側面の検査が実施され、言語機能の改善と、コミュニケーション活動の向上を目指した訓練・指導が行われます。

(5)言葉の遅れ

  • 言語発達障害:さまざまな原因によって、ことばを理解する力や表現する力が同一年齢の平均的発達水準から遅れている(量的異常)、理解はできるがあまり話さないなど、理解する力と表現する力の差が大きい、聴いて理解する力と視て理解する力の差が大きいなど、言語の処理のされ方に違いがある(質的異常)状態を、言語発達障害と言います。ことばは、子ども自身が言語を獲得あるいは学習する能力と、子どもと他者(家族・友人・先生など)との相互作用を通じて発達していきます。先天異常に伴う知的障害(ダウン症など)、他者とやり取りをする力の発達の問題(自閉症スペクトラム障害)、高度の難聴、原因がわからないものなど様々です。
  • 言語リハビリテーション:言語発達障害への介入は、ことばの獲得への基盤作り(認知・概念などの基礎的な段階、音声言語への関心・注意、行動のコントロール)とことばの諸側面(FORM文法・語連鎖、CONTENT語彙・意味、USE運用・やりとりでの言葉の使用)の発達を促すこと、家庭や幼稚園・学校での言語でのやりとりや学習の支援からなります。こどもの発達段階に合わせた課題設定と適切なトレーニング、家庭学習が盛り込まれます。

(6)聴覚障害

  • 成人の聴覚障害(加齢性難聴):一般的に高齢になると、耳の聞こえ(聴力)が低下します。聴力の低下は個人差があり、周囲が静かであれば聞き取りに支障のないレベルから補聴器がなければ音がほとんど聴こえないレベルまで様々です。高齢者の難聴(加齢性難聴)の特徴は、音は聞こえるがことばがはっきり聞き取れない場合多く、補聴器を装着すると改善する場合があります。
  • 小児の聴覚障害:先天的にあるいは後天的に小児期に耳の聞こえが低下する場合があります。先天性の難聴は奇形や風疹症候群による内耳障害によるものが多く、後天性難聴は中耳炎などの伝音障害(鼓膜や耳小骨の障害)やムンプス(おたふく風邪による内耳障害)などに罹患して起きる場合などがあります。乳幼児期に生じた難聴では言語発達の遅れや構音発達に支障が生じることがあり、学童期では学習上のハンデとなり学力低下を示すことも考えられます。難聴によるきこえと言葉の理解への影響は、難聴の程度、難聴の種類(伝音性と感音性、低音・高音障害)によって異なります。
  • 聴覚評価:成人では、音刺激を自覚して反応する純音聴力検査(音のきこえ)、語音聴力検査(ことばの聞き分け)によりきこえの状態を評価することができます。小児の難聴(特に乳幼児)では、その子どもの発達に応じた聴覚検査法による評価が必要です。生後0か月から2歳頃までは、聴性脳幹反応(ABR)、聴性行動反応(BOA)、条件詮索反応聴力検査(COR)などの他覚的検査法(本人との意思とは無関係な方法)により聞こえの程度を調べることができます。幼児では2歳程度から検査の練習をすることで、ピープショウテスト、遊戯聴力検査などの自覚的な聴力検査(本人の意思による方法)が可能となり、周波数ごと聴力(閾値)や難聴の種類を確定することができます。
  • 治療・補聴・聴能リハビリテーション:加齢性難聴に対しては、その人の生活様式に応じた相談、助言が行われます。ご本人に対しては補聴器の試聴や補聴器の装用指導が行われ、ご家族に対しては話し方についての家族指導が中心になります。また、聴力管理のための定期的な聴力検査も実施いたします。小児の難聴に対しては、聴力の精査、補聴器のフィッティング、人工内耳装用児に対しては人工内耳のマッピングも行われ、個人に合わせた、聴能言語訓練、構音障害への訓練・指導が適期に実施されます。

(7)高次脳機能障害

  • 認知症:いろいろな記憶障害(最近の出来事、物事の取り扱い方等)とそれ以外の複数の脳機能障害が重複して起こり、日常・社会生活に支障をきたした状態で、進行性あるいは慢性的なものをいいます。脳の変性や損傷(アルツハイマー病、ピック病、多発性脳梗塞)によって起こります。
  • 頭部外傷に伴う諸問題:交通事故などによる頭部外傷に伴い大脳の機能低下が起こり、言語だけでなく記憶、注意、行為、情動の異常が出現した状態です。
  • 神経疾患に伴う記憶や注意の障害:変性疾患(パーキンソン病等)に伴い記憶や注意の低下がみられる状態です。
  • 評価と治療・脳機能リハビリテーション:記憶(物忘れ)や注意の検査および脳機能の訓練が行われます。
  • ※当院では、これらの障害の診断と治療のための高次脳機能障害(もの忘れ)外来を開設しております(週1回予約制)。

(8)摂食嚥下障害

  • 摂食嚥下障害:認知した食物を口に運んで取り込み、咀嚼などによって送り込みしやすい形状にして胃へと運ぶ一連の過程が、なんらかの原因で低下した状態です。さまざまな疾患や加齢性変化に伴って生じる障害で、小児から高齢者まで幅広い年代に及びます。
  • 評価と治療・嚥下リハビリテーション:摂食嚥下機能そのものの問題を明らかにするとともに、認知機能など経口摂取を円滑に行うために重要なものを全体的に評価します。評価をもとに年齢や原因に応じて、機能訓練や症状にあった食べ方、飲み方の学習を行います。 また、摂食嚥下障害によって栄養不良や新たな病気が引き起こされることがないようにします。

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